鉄道会社が広告を出す理由

2017年11月28日

鉄道会社の経営 ローカル線からエキナカまで (中公新書)

個人顧客が多い企業は、積極的に広告を出すことで新規顧客の開拓や既存顧客の囲い込みに取り組みます。鉄道会社の積極的な広告を行うことで、競争からの生き残りを図っています。

しかし、鉄道は利用せざるを得ない人が多くいると考えられます。例えば、地方部の鉄道を例にとれば、自動車運転免許を取得できない高校生にとって、鉄道は貴重な通学の足となります。また、道路整備が不十分な地域では、短距離の移動には自動車を利用するとしても、中長距離の移動には鉄道を利用することが多くなるというケースもあります。こうした事情を考えると、必ずしも鉄道会社が積極的に広告を出さなくても良いと感じるかもしれません。では、鉄道会社が広告を出す理由は何なのでしょうか。

まず、広告を積極的に出している鉄道会社は、大きく2つに分けられます。1つは、都市と郊外を結ぶ鉄道で、他社と競合する路線が多い会社です。もう1つは、観光客の利用が多い路線が中心の鉄道会社です。

都市と郊外を結ぶ路線がドル箱となっている鉄道会社は、何としてでも顧客を他社にとられないようにしたいところです。鉄道では距離別運賃が基本なので、郊外から都市部へ通勤・通学してくれる顧客は、運賃をたくさん払ってくれるお得意様だからです。都市と郊外を結ぶ路線では、速達性に加えて快適性も求められます。多少時間が長くかかっても、解的に通勤・通学したいと考える乗客が入るからです。そのため、都市と郊外を結ぶ路線を持つ鉄道会社では、ダイヤ改正などによる速達化のアピールや、新型車両の導入に伴う快適性向上の宣伝などを行い、自社路線の固定客を増やす努力をしています。

いっぽう、観光客の利用が多い鉄道会社では、観光シーズンに的を絞って広告を出す傾向があります。というのも、地元の人々の利用によって成り立っているというよりも、観光シーズンに観光客が押し寄せてくることで採算がとれているからです。こうした鉄道会社では、自社の車両などをアピールするというよりも、沿線の観光資源の魅力を知ってもらい、自社路線のある地域に足を運んでもらえるような広告を出す傾向があります。