山手線はなぜ各駅停車なのか
東京の都心部を走る鉄道路線の1つに山手線があります。山手線では、列車が各駅に停車します。通過駅を設けたほうが速達性を図れるのではないか、という考え方もありますが、山手線は各駅停車です。では、なぜ山手線は各駅停車なのでしょうか。大阪中心部周辺を走る環状路線の大阪環状線内は、通過駅のある優等種別が走っています。この違いはどこから来るのでしょうか。
山手線が各駅停車である理由の1つは、すべての駅の利用者がある程度多いことです。そのため、通過駅を設けようとすれば、どの駅を通過駅にするのかが悩ましい問題となってしまいます。大阪環状線では、私鉄と連絡する駅や、郊外へ向かう路線が分岐する駅などに利用者が集中しており、逆に利用者が比較的少ない駅があるため、通過駅を選定しやすいという事情があります。
また、山手線では、列車本数が多いために、たとえ快速を走らせたとしても、各駅停車にすぐに追いついてしまい、結局あまり時間短縮効果が期待できません。この点については、大阪環状線でも同じ問題が指摘されており、通過駅の完全廃止には至っていないものの、快速の停車駅増加や、ラッシュ時に快速を区間快速として、環状線内を各停にするなどの工夫がとられています。
各駅停車にしておくメリットは他にもあります。各駅停車にすることによって、山手線内の駅であれば、山手線の電車に乗れば必ず到達することができます。快速が走っていると、目的の駅を通過する快速に誤って乗ってしまう可能性があります。各駅停車であることは、乗客にとってもメリットがあるのです。
さらに、各駅停車のみを走らせることによって、ダイヤを組みやすくなり、列車の運行間隔を安定させることができます。その結果、列車の混雑率を平準化する効果が期待でき、異常なまでに混雑した列車が発生しにくくなります。混雑率が高まりすぎると、乗降に時間がかかり、遅延が発生しやすくなります。また、ホームに人があふれかえり、転落事故が発生する懸念も高まります。こうした問題を減らすことにも、各駅停車であることは貢献しているのです。