新幹線の時間の正確さは何によって支えられているのか
日本は海外へ高速鉄道システムを輸出する取り組みを行っています。日本が海外に高速鉄道システムを売り込むにあたって、アピールポイントとなるのが、新幹線の定時性です。海外の鉄道は、高速鉄道であるかどうかに関わらず、遅延が発生する確率や、遅延の大きさが日本の鉄道システムより大きくなっています。そのため、精度の高い高速交通システムを形成したい国にとっては、日本の新幹線の定時性が大きな魅力となります。では、日本の新幹線の定時性を支えているものは何なのでしょうか。
ここでは、日本の新幹線のうち最も利用者が多い東海道新幹線を例にとって考えます。東海道新幹線には、スピードが異なる「みずほ、のぞみ、さくら、ひかり、こだま」が走っています。ここでは単純化するため、「のぞみ、ひかり、こだま」の3つに分けて考えます。まず、最速達で停車駅が少ないのがのぞみ、のぞみよりやや停車駅が多いのがひかり、各駅停車となるのがこだまです。
このうち、ひかりやこだまはのぞみの通過待ちをすることがあるので、停車駅で遅れを挽回しやすいダイヤです。しかし、のぞみは通過待ちをすることが基本的にないため、停車時間の短縮によって遅れを挽回することは難しいです。また、のぞみはそもそも停車駅が少ないので、時間の管理がラクだと考える人がいると思います。ところが、のぞみは停車しない駅の通過時間も管理しています。一般の利用客向けに提供されている時刻表には、通過時間は記載されていませんが、乗務員向けの時刻表には通過時間が明記されているのです。
さらに、通過時間は1秒単位で記録されています。1秒でも早く、あるいは遅く通過した場合には、次の駅までに速度を微調整して、定刻で通過できるように取り組んでいます。
日本の新幹線は車両の性能面でも優れていますが、このような厳しい時間管理を行うことで、定時性を確保しています。また、厳しい時間管理に対応できる運転士の技能の高さも日本が誇れるポイントです。