鉄道が「非日常」の存在となる時代が到来か?

Amazon | 鉄道ジャーナル 2018年 01 月号 [雑誌] | | 鉄道

鉄道は都市・郊外居住者を中心に身近な存在

 鉄道ネットワークが全国各地に張り巡らされた日本では、鉄道を日々利用している人が多いです。毎日利用してはいなくても、都市部や郊外の居住者であれば、駅あるいは周辺地域に足を運ぶことが多いでしょう。

 そんな私たちの日常に浸透している鉄道が、「非日常」の存在となる日が来るかもしれません。沿線人口が減少している路線を中心に、廃線が進められているからです。都市部の路線に廃線の流れが押し寄せてくるのははるか先でしょう。しかし、減便や駅の廃止などは着実に進むはずです。すでに地方では鉄道の利用機会が長距離中心になっているケースもあります。鉄道が身近な存在でなくなってしまうことは寂しい限りです。

鉄道の通勤・通学利用者比率は低下傾向

 鉄道の通勤利用者数は、景気に左右されます。そのため、景気が回復するにつれて通勤定期の販売が伸び、ラッシュも激しくなります。混雑率の上昇は鉄道会社にとって1つの課題ではありますが、多くの乗客をまとめて運ぶことで収益を伸ばせるメリットが大きいです。

 また、通勤・通学需要は底堅く、鉄道会社にとっては安定収益となりやすいです。定期券の比率が高いことで、キャッシュを先に回収できる点も魅力です。しかし、中長期的に歯鉄道の通勤・通学利用者比率は低下傾向です。観光需要が高まっていることもありますが、鉄道が「地域の足」ではなくなりつつあるのかもしれません。

 通勤・通学利用者の比率が低下すれば、鉄道ビジネスの安定感がなくなる可能性があります。例えば、世界で大規模なテロが発生して旅行需要が減少すれば、観光客数は急減するでしょう。こうした際に鉄道を支える通勤・通学需要の比率が低ければ、鉄道会社は臨時的にダイヤを間引くなどの対応をしない限り、コストばかりがかさんで収益が悪化してしまいます。

 もっとも、環境面への配慮から自動車通勤から自転車や公共交通機関を利用した通勤を促す企業もあるようです。こうした動きがさらに拡大すれば鉄道利用者が底堅く推移しそうなので、鉄道ファンとしては大いに期待しています。

鉄道会社は路線維持のために付加価値を高めたい

 鉄道会社としても、沿線住民の利用が減少する様子に手をこまねいているわけにはいきません。路線を維持するためには、乗客1人当たりの単価を高めたいところです。単にA駅とB駅の間を輸送するだけではなく、運輸サービスに付加価値をつけることで路線網を維持しやすくなります。

 具体的な取り組みはすでに鉄道各社がスタートさせています。ラッシュ時に着席が保障されるライナーや優良特急などが該当します。東京・大阪圏を中心に、鉄道会社は有料の着席保証サービスを提供し始めています。列車の運行本数を増やすことが難しいケースでも、1車両だけを座席指定にしている京阪プレミアムカーのような工夫が見られます。

 ライナー券などを販売したところで、鉄道会社の増収はたかが知れている、と感じるかもしれません。確かに座席指定に必要な費用は300円や500円など、それほど高額ではありません。しかし、通勤時の片道運賃が500円を大きく上回っている人の割合はそれほど高くないでしょう。遠距離通勤をしている人は1,000円程度の片道運賃の区間、毎日列車に揺られているかもしれません。ただ、片道1,000円を超えるような距離になると、最寄り駅が始発となる列車が運転されているなどして、座席指定券を買わなくても着席通勤できるのではないでしょうか。

各停では時間がかかりすぎるものの、優等種別に乗るとラッシュがつらい、という中距離通勤層が座席指定サービスの主な対象と言えます。そのため、座席指定サービスの利用者は通常運賃だけの場合と比べて2倍程度の収入を鉄道会社にもたらしてくれると考えてよいでしょう。

 課題としては、ライナー用の車両や編成を日中にどう活用するかです。日中にも有料特急などとして走らせている鉄道会社もありますが、空席が目立つ路線も少なくありません。日中は観光需要を取り込んだり、座席指定料金を割り引いたりして空席を減らし、車両を有効活用してほしいところです。