地方鉄道の維持にふるさと納税が役立つ可能性

[保井俊之, 保田隆明]のふるさと納税の理論と実践(地方創生シリーズ)

総務省が通達を出すほど返礼品が人気のふるさと納税

節税に役立つとして、ふるさと納税が高所得者を中心に大人気となっています。地方自治体でもふるさと納税による寄付金で人口減少に伴う税収減を補おうと、豪華な返礼品を出すことで寄付額を増やそうと熱心に取り組んできたところが少なくありません。

ただ、ふるさと納税の本来の趣旨は、都市部に集中しがちな税収を地方にも分散させることです。そのため、地方同士が寄付金を奪い合う構造は望ましくありません。そのため、総務省が通達を出して、寄付額に対して金額が大きすぎる返礼品は自粛するべきであるとの旨を述べました。返礼品競争は緩和したものの、依然として高額の返礼品を設定している自治体は残っています。自治体の財政を維持するためには、ふるさと納税による寄付金収入が欠かせなくなっているのでしょう。

地方鉄道の赤字は沿線自治体による補填が多い

地方では、赤字ローカル線が多数あります。赤字額の大きさから鉄道会社が廃線を決めることを防ぐ目的で、沿線自治体が赤字を補填しているケースが少なくありません。鉄道路線が赤字になるエリアなので、地方自治体の財政も厳しいケースが多いです。それでも、代替のバスやタクシーを走らせるとしてもコストがかかるほか、鉄道が廃線となることでさらに沿線人口の減少が加速すると考えられることなどから、厳しい財政状況の中でも鉄道支援目的の支出を継続する自治体が多いです。

もちろん、沿線人口が増えなくても観光客や鉄道ファンを誘致することで路線を維持できるチャンスはあります。しかし、こうした取り組みを進めようにも魅力度の高い観光資源が沿線に少なかったり、鉄道ファンにとっても列車の本数が極端に少なく、周辺に宿泊施設が豊富な都市が見られず乗りに行きにくかったりといった理由で、乗客を増やしづらいケースも考えられます。鉄道の維持に取り組む自治体は少なくないのに、毎年のように廃線となる路線が出てしまうことからも、利用客増への取り組みが実を結ばないケースが多いことがわかります。

そのため、赤字ローカル線を維持するためには鉄道事業での収入増には限界があります。地方自治体の財政力を改善し、赤字補填能力を高めさせることの方が、結果的にはローカル鉄道の維持につながるのではないでしょうか。本末転倒なようにも思えますが、何としてでも鉄道を維持したいと考える自治体は、取り組む価値のある手法だと思います。

ふるさと納税を集めれば地方鉄道の維持につながる可能性

地方鉄道を維持するためには、沿線自治体が多くの赤字を補填する必要があります。そのため、中長期的には鉄道会社・沿線自治体とも赤字を補填しきれなくなり、廃線に向かっていくこととなります。

とはいえ、鉄道ファンとしては鉄道ネットワークができる限り維持されることを望みます。そこで、人気のふるさと納税を活用できないかと考えています。例えば、ふるさと納税で一定額以上の寄附をした人には観光鉄道の乗車券を返礼品として提供するなどの方法が考えられます。ふるさと納税で寄付を募る仕組みであれば、沿線自治体の財政負担が直接高まることはありません。また、地方鉄道の維持は地方の活性化につながるため、ふるさと納税の趣旨とも一定程度合致しています。観光鉄道の乗車券などでは都市部からのアクセスが不便な自治体への寄附はなかなか増えないかもしれません。しかし、鉄道ファンからの寄附が想定される以上、ぜひ赤字ローカル線を抱えている自治体は積極的にチャレンジしてほしいと思います。

また、さらに赤字補填が難しくなっている場合は、地方に足を運ばなければならない乗車券などではなく、鉄道関連グッズを制作して効率よく寄付を集める方法もあります。地元の製菓会社と連携して鉄道車両柄のスタンプが押されたお菓子を製造して返礼品にするなどの取り組みであれば、少ないコストで新たな返礼品を開発することができます。ローカル線、とりわけ地元自治体との結びつきを強めやすい地方の中小私鉄を抱えている自治体では、ふるさと納税を活用した鉄道維持・再生に取り組んでほしいところです。