大阪市営地下鉄は民営化後「大阪メトロ」へ
大阪市営地下鉄は来春に民営化
大阪市営地下鉄は2018年春に民営化されます。民営化によって運賃の引き下げや、大阪市の財政負担軽減が期待されています。すでに大阪市営地下鉄では運賃引き下げを進めてきましたが、御堂筋線を中心に利用客数が多いことや、JR大阪環状線などと比べて運賃が高いことからまだ引き下げ余地はあると考えられます。
民営企業となれば名称も変わります。どのような名称になるのかが注目されていましたが、先日「大阪メトロ」となることが発表されました。東京メトロと似た名前になりましたね。訪日外国人観光客の利用を考えると、海外でもなじみ深い「メトロ」を含む名称にしたことは良いと思います。
駅ナカ開発などで利益増に期待
大阪メトロが民間企業として活動を本格化すれば、駅ナカ開発などで利益が増えることが期待されています。自治体による運営と異なり、他の民間企業とも交渉を進めやすくなるからです。駅の利便性が高まることで利用客が伸びれば、さらに大阪メトロの利益は伸びることとなります。
大阪メトロの株式は大阪市が保有します。そのため、メトロが多くの利益を出せば、大阪市は多額の配当金を受け取ることができます。財政状態が決して思わしくない大阪市にとっては、地下鉄事業の民営化は悲願と言えるでしょう。
また、将来的に大阪メトロの株式が上場すれば、上場に伴う売却益を計上することも可能です。大阪市民だけでなく、市側にとっても、大阪メトロの経営が成功することが期待されています。
不採算路線の増加懸念も
民営化により経営効率化が進められれば、懸念されるのが赤字路線の切り捨てです。大阪市営地下鉄では今里筋線や長堀鶴見緑地線など、利用客数が伸び悩んでいる路線があります。こうした路線について、減便が進められないか懸念している沿線住民の方もいるでしょう。すでに運転本数が少ない路線で減便が進めば、利用客の更なる減少につながる悪循環になる可能性もあります。
しかし、大阪市営地下鉄の民営化に当たっては、路線の維持や新線整備・路線の延伸などを進めることとなっています。そのため、当面は地下鉄の利便性は確保されることとなるでしょう。地下鉄が延伸されてくる地域では、交通アクセスが改善することも期待できます。
ただし、逆に考えれば新路線の建設などにコストがかかり、不採算路線が増加する懸念があります。地下鉄は多くの区間で地下を走行するため、建設費がかさみがちです。民営化に際しての条件に縛られ、大阪メトロが不採算路線を増加させてしまうのではないかと懸念しています。
加えて、大阪メトロは地下鉄事業だけでなく、市バス事業にも関わります。バス事業は地下鉄事業と比べて採算が悪いため、大阪メトロの足を引っ張ることが考えられます。民営化に伴って地下鉄事業は一定の利益を確保できる見通しですが、バス事業が軌道に乗るのかどうかも心配材料です。
将来的な株式上場の可能性は
先ほど、大阪メトロが将来的に株式上場を果たせば大阪市が巨額の売却益を得られると述べました。では、実際に大阪メトロが将来的に上場する可能性について考えてみます。
まず、利益面では大阪市中心部を含む路線網が充実していることから、上場可能な程度の利益は確保できると考えます。中長期的な人口減少が懸念されるものの、都市中心部は郊外と比べて人口減少のペースが遅いです。また、駅ナカ開発を進めることで鉄道事業以外から得る利益を増やせるとも考えられます。
いっぽう、上場するとなると大阪市が株式を売却することになります。大阪市が地下鉄への関与を弱めることになるため、果たして住民の同意が得られるのかどうかが気になります。もちろん、売却する株式数を抑える方法もありますが、自治体が経営に深く関与する企業の株式が投資家に好感されるとは考えにくいです。
また、東京では上場はもちろん、東京メトロと都営地下鉄の統一すら実現できていません。東京メトロは巨額の利益を出しているだけに上場すれば株式は人気化すると考えられるのですが、それでも非上場のままとなっています。大阪メトロが上場を目指すとしても、道のりは長くなりそうですね。